今川義元の反撃

「今回は、桶狭間で自身過剰のあまり油断して、織田信長に大惨敗させられた、今川義元さんです」

「おのれは、ゲストに対して、そんな紹介しか出来んのか!!」

「す、すみません・・・。 では、改めまして・・・公家風の文化に憧れ、文弱に流された、今川義元さんです」

「貴様・・・ そこに直れ、刀の錆にしてくれる!!」

「ご、ごめんなさ〜い。 でも、世間一般にはそう認識されていますので・・・」

「確かに・・・そのようじゃの・・・」 *がっくり*

「ちょっと、聞きたいのだが、儂のどこが文弱だと言うのじゃ?」

「まずは、そのお歯黒でしょう。 どう見ても、公家にしか見えませんよ?」

「それは、当然ではないか? 足利将軍家でさえ、尊氏あたりを除けば、その生活は公家となんら変わらぬのじゃ、それに準じて何か不都合な点でもあるのか? 文官・武官の区別など、江戸時代以降の事で、儂らの時代は文武両道に優れている事が名君の条件じゃ。 それにな、家の格と言うものが厳密だから、お歯黒が出来るのは、選ばれた高貴な者だけで、下郎どもには真似が出来ぬもの。 つまり、儂が高貴であることの証明であり、中央政権の近くにいる事を周囲に示しておったのじゃ」

「そ、そうなんですか・・・。でも、名家ならば力に関係無く出来る事でしょう?」

「・・・。お前は、本当に判っておらぬな〜」 *ため息*


「名家の多くは没落している中にあって、その名家を保ち、さらに発展させたのは、儂の政治力と統治能力のなせる技だと言っておるのじゃ」

「政治力?? いったい、どんな事をしたって言うんですか?」

「まずは、検地じゃ。これは父上も行なっていたが、領土全体に展開したのは儂じゃ。 それに、今まで守護は手をつけられなかった寺社領の特権の一部を廃した。 商業では、領内の商人を保護すると共に商業の要地を直轄領にし、その利益で今川家の支配体制を強固なものにした。 外交では、力を持ち始めた北条氏が駿河に侵出するのを牽制する為に、武田家と手を結んだ。 しかも、武田家でお家騒動が起った時には、追放された信虎が再起せぬよう軟禁状態にする事で、新当主の晴信と手を結び、下手をすれば壊れてしまったで あろう武田家との仲を更に強固なものにした。そして、こちらに有利な状況にしてから、北条とも手を結ぶ・・・。 後世では『善徳寺の会盟』とか『三国同盟』とか呼ばれているらしいが。 儂は上洛を果す為に、西進する必要があったから、これにより後顧の憂いを断った。 どうじゃ、完璧であろう」 

「で、その上洛途中で、信長に討たれて無様な戦死・・・。武勇が無かったんですね」

「儂に武勇が無かっただと!!」

「ええ、あっさり討たれてますし、太っていて動けなかったんでしょう?」

「どこをどうすれば、そういう解釈が出来るんだ!! 確かに、儂は中年になって少々太っていたし、胴が長かった事も否定はしない。 しかし 、最後まできっちり戦ったぞ。 服部とか言う下郎が、槍をを突き入れてきた時も、槍先を切り捨てたし、その反動で地に転び組みつかれそうになった祭には、相手の脛を切り払っている。 そこへ、毛利とか申す奴が組みついてきて、武運拙く首を掻かれたが、その前にそやつの指も食いちぎってやった。 これでも、武勇が無かったと言うか!!

「大将一人で、そこまで戦ったとなると、確かに武勇と言っても良さそうですね・・・。 でも、戦勝に酔って桶狭間で油断した所を討たれたのは、どう考えても間抜け・・・」

「戦勝に酔っていただと・・・。 やはり、凡人には儂の戦略が判らぬか・・・」

「戦略? あれが??」 *くすくすっ* 

「お前のその態度には辟易としてきたが、説明だけはしてやる。 儂の実力を考えれば、城を少々落したくらいで、戦勝に酔う必要など無いのだ。 本来ならば、尾張を制圧後に兵に休息を与える事が、定石であるが、儂は別の事を考えていた。 上洛路を考えてみると、京は三好家が陣取っているが、儂から見れば甘さが目立つ。 それに、もし一戦交えるにしても、京の地は攻めるに有利なれば、追い落しも可能である。 近江は小豪族どもが割拠しておるが、武威を示し領土を安堵してやれば、軍門に下るであろう。 唯一、問題に成りそうなのは朝倉家と同盟している浅井家であるが、朝倉家も舵取りの宗滴が死亡しておるし、軟弱な義景ならば、あしらう事など造作も無いから楽なものじゃ。 そうなると、敵対しそうな勢力は、尾張の織田家と美濃の斎藤家。 尾張を制圧した後の休息では、制圧の安堵感と駿河からの遠征の疲労で、士気が落ちる。 そこを斎藤家に衝かれては、思わぬ遅れをとるであろうと考えた儂は、兵の疲労を事前に 取り去る為に、定石を無視して桶狭間で大休憩を取る事にした。 しかし、織田の小倅はそれを読んでおった。 あの小倅も、常人以上の武将の資質を持っておったようじゃの」

「おぬしに誉められても、嬉しくも無いわ。 余は天才ゆえ当然なのじゃ」

「あ、あなた様は・・・ 織田信長様!!」 *興奮*

「こら!! 貴様、その態度の差は何じゃー!!」

「だって、多くの改革をなさった偉大な信長さまですよ!!」 *すりすり*

「いかにも、余が第六天魔王の生まれ変わりの信長じゃ」

「ちっ、儂の二番煎じの小僧が!!」

「二番煎じ??」 *冷めた目*

「お前は、今まで何を聞いておった!! 今までの話しを総合すれば、こやつが儂の二番煎じである事は明らかであろう!!」

「はて、どの辺が??」

「寺社領の特権への介入にしても、商業の推進にしても、儂はすでにやっておった。 しかも、こやつの後を継いだ、猿面冠者のやった検地すら儂は実施しておったのじゃ!!

「はあ、そうとも言えない事はないですけど・・・」 *無表情*

「余は、徹底的にやったからの〜。おぬしのように中途半端では、歴史にその名は残せないと言う事じゃの」 *勝ち誇り*

「歴史を自分の都合の良いように改竄して、儂を貶めた奴が・・・」

「まあ、権力を握った者の権利と言うものであろう。 おぬしは、余に不意を衝かれて、ぶざまな負けを喫したのじゃ、公家文化に浸り過ぎた凡将・愚将と言われて物笑いの 種にされても仕方あるまい・・・」

「そう言う貴様だって、自身満々に上洛して茶の湯に入れ込み過ぎて、家臣に不意を衝かれて、ぶざまに殺されたくせに、何を偉そうに言ってやがる!! 儂と大差はあるまい。それを英雄の死などと・・・ 片腹痛いわ!!」

「あ、あれは・・・」 *動揺*

「そう言われれば、そうですね・・・」 *冷静になってきた*

「家臣の管理さえ、まともに出来ぬようでは三流じゃの〜。 がははははっ!!」

「な、なんだとー!!」

「やるかー!! いつでも相手になってやるぞ!!」

「その、お歯黒の歯をへし折ってやる!!」

「その腐った性根を叩き直してやる!!」

バシッ!! ズガッ!! バコッ!! ベキッ!! ・・・・・

「え〜、醜い争いが始まってしまったので、今回はこの辺で・・・。 次回を御楽しみに〜」

「醜いだとー!!」

「これで終らせる気かー!!」

「あわわ・・・ 私はただ・・・お許しを〜〜〜!」

バキバキバキッ!!

「ぐはっ・・・」

「まったく、どうしようもない司会だったな・・・。飲みにでも行くか?」

「ああ、そうしよう、そうしよう」

「次は、もう少しまともな出演者にして欲しい・・・」 *バタン*

 

 

<完>