鬼の嘆息

鬼ヶ島の鬼達

 

「あなた方が、桃太郎に退治された鬼達ですね?」

「確かに、世間一般の人にはそう言われてるけど、俺達は人間だよ・・・」

「えっ? そうなんですか? でも、その恰好は・・・」

「俺達は、普通の人が持っていない能力を持っていたり、一般人と違う体型で産まれたがために、村人に気持悪がられて村を追い出され、あちこちをさまよってるうちに、同じような境遇の奴らに出会って、適度な大きさの無人島を見つけたんで、そんな境遇の者の安住の地にしちまった。けど、いつここを追い出されるかわからないから、世間一般に言われている鬼の恰好をして、他の人間が近づけない雰囲気を作ったって訳さ」

「その能力とか、体型の違いと言うのは、どんなものなんですか?」

「能力については、霊感がある者もいれば、早熟だった者とか色々さ体型については・・・、う〜ん、言い方は悪いけど身体障害者みたいな感じかな・・・」

「では、なぜ桃太郎に退治されたんですか?」

「桃太郎か・・・。あんの野郎、人の恩を仇で返しやがって、何が鬼退治だ!! あんたも、あいつに騙されてる口かい? 困ったもんだねどうにも・・・」

「恩を仇で返す?? 騙されてる??」

「仕方がねえな。最初から話してやるから、メモ取れよ。 もとを糺せば、あいつは、この島の出身なんだよ」

「え? だって川の上流から大きな桃に乗って流れて来たって・・・。ここは島じゃないですか?」

「この島の人間だって恋愛もすれば、結婚もする。そうすれば必然的に子供も生まれるわな? で、体型も普通・特殊な能力も持っていなかったんで、こんな島で暮らすよりはと思って、夜のうちに川を遡って、明け方に桃の形の船に乗せて、川の上流から流してやったって訳だ。 当然、子宝に恵まれない人が、洗濯をする時間にそこに着くように計算してだぞ」

「まあ、それなら・・・」

「それから数年したある日、桃太郎が3人の友人をつれて、この島に突然帰ってきた。 俺達は立派になった桃太郎を見て、嬉しくなっちまって、盛大な宴会を開いて、もてなしてやったんだ。 けど、あの野郎、三日後の朝に姿をくらましちまった。 しかも、俺達の財産の大半を持ってな!!」

「う〜ん。それが本当なら、ヒドイ話ですね。 でも、財産は人間から略奪してきたものでしょ?」

「・・・。 ちょっと聞くがよ。 桃太郎の野郎、鬼退治で得たって物を略奪されたって人に、まったく返してないだろ?」

「そう言えば、そうですね・・・」

「返せる訳は無いんだよ。 あれは、俺達が丹精こめて作った物なんだから・・・。 俺達には、特殊な能力を持った者が多いから、一般人にはマネの出来ない物が作れる。 お金にしたって、作った物を能力がばれないようにしながら、都に行って行商して売って
 稼いだ金だ!! だいたい、この島にいれば、食べのや生活には苦労はしないから、無理に人の財産を奪う必要なんて、まったく無いんだよ」

「確かにここは豊かですけど、人から略奪したような感じの物は見当たりませんね・・・。 じゃあ、なぜここにいる方達に、略奪されたなんて話しがあるのですか?」

「そんなの決まってるじゃないか、本人がバカな事に使い込んで困った時の言い訳や、盗賊に盗まれた物までを、俺達に被せやがったのさ」

「そ、そうだったのですか〜。 でも、なんで今まで弁明しなかったのですか?」

「俺達が言ったところで、「判りました」と聞いてくれる奴がいるかい? まあ、あんたは特別みたいだけどな・・・」

「解りました。 私が、今の話しをハッキリと世間に認識させます!!」

「記者さん、あんた本当に良い人だね・・・。 だけど、だからこそ忠告しておくよ。 今までの話しを、絶対に他人に喋っちゃダメだよ。 少なくとも、世間の鬼への認識が変わって 鬼の立場を解ってくれる人が、もっと出てくるまではな・・・。 でないと、あんたも鬼の仲間として、村を追い出されちまう。 いいかい、絶対に喋ってはいけないよ・・・」

「・・・・。 し、しかし、それでは・・・」

「いいんだよ・・・。 それに、桃太郎の噂を聞いて『俺も・・・』なんて言い出す奴が出て来る前に、俺達も、ここを去る事になるだろうしな・・・」

「あなた方は、それで本当に良いのですか?」

「良いとは思わん。 しかし、致し方ない・・・。これ以上、詮無い事を言ってくれるな・・・。 では、さらばじゃ」

「・・・・」

「記者さんのお帰りじゃ、だれぞ送って差し上げろ!!」